2015年2月23日月曜日

入院七日目:あれ?抗生物質は?

朝、患部のガーゼを取り替える。
結構な量の膿が出ている。
小さじ一杯くらいだろうか。
色は薄い黄色だ。

午前、診療。
いつものようにベッドに横向きに寝て膝を抱えるような体勢になり、パンツを下ろす。
看護師「もう少し綺麗に洗ってくださいね」
俺「今朝、排便後に痛みがあったので、シャワーを浴びました。その時に結構念入りに洗ったんですけどね」
医師「ええ、十分綺麗に洗えていますよ。滲出液が多いですからね。この調子で大丈夫。」

病室に戻りながら、患部の状態を考える。

看護師が「もう少し綺麗に」と言いたくなるのだから、ある程度汚れていたのだ。
汚れの原因は、膿か便がトイレットペーパーだ。
診療中もその後も、拭いたり洗ったりはしなかったし、指示もなかったので、異物らしい異物ではなかったのだろう。
さらに、「滲出液が多いですからね」というコメントから、それに関係する汚れだと思われる。
おそらく、膿だ。
シャワーを浴びたのが7時頃で診察が11時。
その間、4時間経っている。
この4時間の間に、専門病院の看護師が「もう少し綺麗に」と言いたくなるほどの膿が出たのだ。
にもかかわらず、医師はそれを正常な状態だと考えている。
その証拠に、抗生物質の処方がない。

部屋に戻り、調べ始める。
結構な量の膿がでているのに、抗生物質を飲まなくていいのか。



術後の治療は「湿潤療法」に近いと感じていた。
・ガーゼにたっぷりとアズノール軟膏を塗って1日4回程度取り替える。
・シャワーや入浴で、患部を綺麗に洗い流す。ただし石鹸では洗わない。
という治療方針は、
「消毒して乾かす」かわりに「水で洗って湿らせておく」
という湿潤療法の方針にほぼ合致してるように思える。
この「湿潤療法」の中で、抗生物質はどのように位置付けられているのか。
湿潤療法の生みの親らしい、夏井医師のHPを読み漁った。

www.wound-treatment.jp/title_kanou.htm

結果、 現在の患部は「化膿」していないことがわかった。
上記ページによると、化膿とは傷口に細菌が入って炎症(infection)を起こしている状態、となる。炎症とは、腫れ、陣痛、発赤、局所熱感のどれかの兆候があることだ。それらが一つもなければ、それは炎症ではなく従って化膿でもない。
一方で、傷口に常在菌が入り込み、創面での細菌の常在化(colonization)が起きるのはごく自然な事であって、放置してよいと書いてある。
常在菌である黄色ブドウ球菌を無理に退治しようとして抗生物質を投与すると、こんどはそれに耐性をもったMRSAが登場するのは必然だそうだ。
そのMRSAをバンコマイシンで叩くと、こんどはカンジタやさらにやっかいなカビが発生するとのこと。
確かに。
親族の治療でまさにその連続攻撃を受けた。

炎症を起こさない範囲で、常在菌である黄色ブドウ球菌が繁殖している状態は、他の厄介な細菌の繁殖を妨げる効果があるので、傷を治すにはかえって良い環境とのこと。
ただ、縫合糸やカサブタ、水疱の膜など、体液の循環が及ばない異物の周りでは炎症が起きやすく、それらの異物は取り除いた方がよいそうだ。

なるほど。
抗生物質を投与せず、患部を清潔にするという方針の狙いがわかった。
そういうことか。

シートン法(痔瘻の管をメスで解放切開せず、糸の輪を通して徐々に切る方法)の糸がゴム管みたいなものに覆われている意味もわかった。裸の糸を入れると、その中心部まで体液の循環が及ばず、そこで繁殖した細菌を退治できなくなるのだ。それを避けるために、糸をゴム管を入れておいて、傷が治ってきてからゴムだけ抜き、糸で切るフェーズに移行するのだろう。

治療方針が腑に落ちたので、安心して、徹底的に、患部を湿潤に保ちつつ、シャワーで異物を取り除きたいと思う。もちろん抗生物質は飲まずに。






ちなみに、私が糖質制限を始めたのも、この湿潤療法の夏井医師の本を読んだからだ。
「炭水化物が人類を滅ぼす」という本だ。
全体の1/3くらいでお腹いっぱいになって、全部読む気になれなかったが、読んだ後で実際に自分の行動を変えるに至る本はなかなかない。その意味で、良書だと思う。

で、なぜこの本に注目したかというと、同じ著者の
「傷はぜったい消毒するな」という本を図書館で借りようとして、予約がいっぱいだったからだ。湿潤療法について調べていてこの本を見つけた。
実は、自分の手術とは関係なく、湿潤療法について調べていたのだ。


1月の後半だったか、漁師になった友人から電話があり、彼の漁師仲間が手の指を切断したという。
「お前の奥さん指切断したことあるよね?はえてきたっていってたけど、どうやったの?」と聞かれ
「うちのカミさんは切ったと言っても先端5ミリくらいで、切れ端を縫合したけどぽろっと取れて、下からはえてきたんだよ。だからあまり参考にならないんじゃない?カミさん関係ないけど、正月に弟が『湿潤療法というのがあって、切断した指が再生するとテレビでやってた』と言ってたよ。それが参考になるんじゃない?」
と伝えた。

そんなことがあり、言った手前、湿潤療法についてちょっと調べ、「傷はぜったい消毒するな」を図書館で予約しようとしたのだ。
そうしたら予約件数がハンパじゃなかったので、時間がかかるなーと思い、同じ著者で比較的早く届きそうな「炭水化物が人類を滅ぼす」をとりあえず借りて読んで、糖質制限を開始したというわけだ。

だから、湿潤療法についてはなんとなく知ってたものの真面目に調べたのは今日が初めてで、かつ、糖質制限についてはある程度の知識を持っていて実践中、という状態になった。

先日聞いたところ、その漁師仲間は、いま指にラップを巻いているそうだ。
湿潤療法(ラップ療法)だろう。

0 件のコメント:

コメントを投稿